がんの種類と病気のリスク

がんってどんな病気?

犬や猫も家族の一員として、平均寿命はどんどん伸びています。高齢になるまで元気に過ごす一方、病気の中心もがんや心臓病に変化しつつあります。実際に犬の2分の1、猫の3分の1が悪性腫瘍で亡くなるとされ、人と同様に死亡原因のトップと言われています。

私たち人間も動物たちも、細胞から体はできあがります。細胞は様々なメカニズムで規則正しい働きや分裂をしています。しかし何らかの力で遺伝子の傷ついた細胞が発生し、それが無制限に増殖できるようになることがあります。その細胞が時間をかけて増殖したものが腫瘍です。

腫瘍には良性のもの、悪性のものがあり、悪性腫瘍の一部をいわゆるがん(癌)と言います。悪性腫瘍には肺がんや胃がん、白血病に骨肉腫など色々な種類があり、それは人間も動物たちも同じです。腫瘍は体のどこにでも発生してしまうため、様々な弊害や症状を引き起こし、体を障害していきます。

例えばがんが皮膚にできるとしこりとなり、消化器系のがんであれば吐き気や下痢を、泌尿器系のがんであれば血尿などが現れます。さらに、がんが進行すると腫瘍細胞が正常細胞の栄養まで奪っていくため、体重の低下や食欲が減退していきます。

また、がんが他の病気と異なる大きな特徴として「再発」と「転移」があります。「再発」とは、治療して治ったと思っていたがんが同じ場所や違う部位に発生してくることを言います。悪性腫瘍は根をはるように増殖していくため、再発は残念ながらまれなことではありません。

「転移」とは、がんが最初に発生した場所から別の臓器に移動して増殖していくことです。腫瘍細胞は血液やリンパに入り込み、肺や肝臓、リンパ節など体中の様々な場所に散らばっていく可能性があります。よく聞く「ステージ」とは、元のがんの大きさやこの転移の進行度によって決まります。転移が進行した場合、治療が難しくなることも多く、さらに隠れて進行していくことも多いため注意が必要です。

このようにがんは体の様々な場所で発生する可能性がある一方で、あいまいな症状から始まることもあり、さらには再発や転移といったがん特有の病状で体を蝕んでいきます。だからこそ、人医療でも言われているように早期発見と的確な治療が大切な病気なのです。

がんの特徴

  • 「がん」とは異常細胞が無限に増殖し、体を蝕んでいく病気
  • 現在、犬・猫の死亡原因は「がん」がトップ
  • 「がん」は全ての内臓や器官に発生する可能性があり、それぞれ色々な種類がある
  • 「がん」は元気や体重の低下だけでなく、発生した器官やその性質により様々な症状が認められる
  • 「がん」は再発したり、転移したりするため診断・治療が難しい

がんの種類

皮膚のがん

皮膚のしこりとして見つかります。皮膚は全身を覆っているので、体や足先、耳や口、肛門の周りなど様々な場所に発生します。

皮膚にできる腫瘍は、肥満細胞腫や軟部組織肉腫、脂肪腫、組織球腫、リンパ腫など良性から悪性度の高いものまで色々な種類があります。

消化器のがん

口から胃腸を通り肛門までのご飯が通過する経路を消化器と言います。消化器は食事を消化・吸収する働きをもつ重要な組織です。

消化器ガンには口腔内腫瘍(メラノーマ、扁平上皮癌、線維肉腫など)、胃癌、小腸癌、大腸癌、胃腸のリンパ腫や肥満細胞腫、肛門周囲腫瘍(肛門周囲腺腫・腺癌、肛門のう癌)が発生します。

腹部のがん

肝臓は栄養素を作り蓄え、代謝毒分を分解する重要な臓器です。脾臓は血液のフィルター作用を持つ臓器で、肝臓・脾臓どちらにも悪性腫瘍は発生します。

どちらも症状が出にくい臓器であるため、発見時には大型で転移をしているということもありえます。肝臓には肝細胞ガン、胆管ガン、血管肉腫やリンパ腫、脾臓には血管肉腫、結節性過形成、リンパ腫などの病変が発生します。

泌尿器のがん

腎臓から尿管、膀胱、尿道、前立腺と尿に関係する経路を泌尿器と言います。近年の、医療機器の発展によって発見されることが多くなっています。

泌尿器のガンには腎臓がんや腎臓リンパ腫、膀胱がん、前立腺がんなどが認められます。

呼吸器のがん

鼻から喉頭・気管を通り肺に至る空気の経路を呼吸器と言います。

犬・猫ともに鼻の内部には鼻腔内がんやリンパ腫などが発生し、肺には肺ガンや組織球肉腫と言った悪性腫瘍が発生します。

咳や呼吸困難などの強い症状が出る可能性があり早期発見が重要です。

胸部のがん

胸部には肺のがん以外に心臓や前胸部(縦隔という組織)に悪性腫瘍が発生します。

心臓には血管肉腫、大動脈体腫瘍、中皮腫、リンパ腫などが、前胸部には胸腺腫、リンパ腫などが発生します。

脳・神経・運動器のがん

犬や猫にも人と同様に脳腫瘍や骨肉腫が発生します。脳には髄膜腫、リンパ腫、神経膠腫などが、骨や筋肉には骨肉腫、軟骨肉腫、軟部組織肉腫、組織球肉腫などが発生します。

生殖器のがん

犬・猫ともに生殖器の腫瘍はよく発生し、特に乳がんや精巣腫瘍がよく認められます。他にも卵巣や子宮にも悪性腫瘍ができることがあります。若齢時の去勢・避妊手術が発生予防に非常に効果的です。

血液のがん

犬と猫の血液ガンとしてリンパ腫と白血病が発生します。特にリンパ腫は犬猫ともに非常に多く認められ、多中心型(リンパ節中心)、消化管型(胃腸中心)、縦隔型(胸部中心)、皮膚型(皮膚や粘膜中心)、節外型(脳や腎臓などその他の臓器)のタイプがあります。